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海とサバニを愛するチーム、ニヌハ vol.1 「サバニ」の進水式

沖縄の伝統式漁船「サバニ」の進水式(シナウルシ)を沖縄、糸満で行ってきました。僕、大瀬が所属するサバニチーム「ニヌハ」 で今回、新しく旅用のサバニを新造しました。 サバニは櫂で海を漕ぎ、帆で走る外洋航海の可能なカヌーです。その術を今、サバニのルーツである本場、糸満の地にて、年に何度かの合宿で海の仲間達と真剣に学んでいます。今回のサバニは、沖縄本島でも数少なくなったサバニ大工、糸満にある大城造船の大城清氏と高良和昭氏に制作を依頼し、美しいサバニ「美ら舟(キランニ)」を産み出してもらいました。

 

 

新しいサバニの名は僕のシーカヤックの師匠、仲村忠明の名から、忠をもらい、「ニヌハ忠」としました。仲村忠明の30年来となる想いを込められた本当に素晴らしいサバニです。これから我々はこのサバニに乗り、島を渡り、北を目指します。

 

チームメンバーは、代表、沖縄、仲村忠明、宮崎から大塚洋、屋久島から新村和宏、奄美大島から熊崎浩、以下沖縄メンバー、沖縄から星野毅、藤田充隆、仲村玄徳、仲村尚徳、高橋巧そして滋賀から私、大瀬志郎。

海とサバニと笑いを愛するメンバーで真剣かつ楽しく活動していきます。

 

予定では、2022年 糸満〜久米島、2023年 沖縄本島〜奄美大島の島渡りを予定しています。その後も北を目指し、北海道まで北上して行く予定です。

 

ただサバニでの島渡りを達成するのだけでなく、琉球の海人の叡智であるサバニ、そして人類の叡智ともいえる小さな舟、そして日本の海に向き合い、そして海に伴う先人達のドラマを紐解きながら、じっくり旅を進めていきたいと思います。

 

 

我らのチーム、そして舟の名につく「ニヌハ」は、子の端(ネノハ )、北の方向の端、極北を意味します。

このサバニで北を目指し、航海することで何か人間にとって根源的なものが見えれば、それを皆さんにお伝えしていきたいと思います。

 

そして、安全に航海を行うために必要なライフジャケットとして、Palm社のペイトをチーム用ライフジャケットとして採用させてもらいました。

デザインはシンプルですが、ポケットも大きいので、行動食や安全のための装備を確保できます。そしてフォームが柔らかく、着心地もいいので、長時間の航海で使用しても、着疲れのないライフジャケットです。

外洋航海を意識して、目立つカラーである赤色を選択しました。

大事に使用して北海道まで、お供してもらおうと思います。

 


 

サバニとは?

サバニは海人の町、糸満で生まれたサメ漁に使う船のことです。

語源は「※サバ漁に使うンニ(舟)」、「サバンニ」から「サバニ」になったという説が有力です。サバとは沖縄でサメを意味し、「サバアッキサーブ二」(サバ=サメ漁をする舟)が、「サバンニ」となります。

琉球王国時代、中国との交易品としてフカヒレが珍重されており、糸満の漁師たちがサメ漁を担っていました。当時は丸木をくり抜いて造るマルキンニ(丸木舟)、という一本の木をくり抜いて造る舟を使っていましたが、明治時代にマルキンニの大工だった金城徳が改良し、はぎ舟(「ハギンニ」)へと代わりました。これがサバニ、「糸満ハギ」の元となりました。

糸満の海人は奄美群島から八重山までの琉球全体に出漁していました。また、九州、山陰、四国、和歌山、伊豆諸島だけでなく、さらに、フィリピン、シンガポールなどの東南アジアにも出漁していました。

そんなサバニも戦後にFRP(繊維強化プラスチック)で造る舟の登場で、漁船としての役割を終えました。戦後、米軍戦闘機グラマンの燃料タンクが払い下げられ、県から各漁村に割り当てられました。軍用バイクのエンジンがサバニに取り付けられるようになると、サバニの形もスクリュー位置を考慮した形へと変わっていきました。

社会が復興すると、サバニはやがて姿を消していきました。また、FRPが広まると、木造船を造る海人はいなくなりました。

 

20世紀に漁船としての役割を終えたサバニですが、2000年に座間味島と那覇の間を走る「第一回サバニ帆漕レース」が開催され、レース用の舟として再注目され始めました。ヨットやカヌーよりも操船が難しいものの、かつて糸満の海人たちが築き上げた叡智と機能美に多くの人々が魅了されています。

沖縄ではサバニの体験乗船プログラムもあります。糸満帆掛サバニ振興会では、海洋文化を次の世代に継承することを重視し、沖縄水産高校のサバニ実習に全面協力も行っています。

沖縄の伝統文化に興味関心を持っている人々に向けての体験プログラムの提供や、情報発信も行っています。

 

参考資料:糸満帆掛サバニ読本

 

糸満帆掛サバニ振興会 Facebookはこちら

 

 

 


 

大瀬 志郎

海上保安庁第八管区認定安全推進パドラー。フォールディングカヤックを駆使し、自由に海を渡る外洋パドラー。キャンプスキルのレベルも高い。漕ぎだけでなく、カヤックでの帆走も行っており、九州〜西表島(トカラ除く)までの帆走経験を持つ。今後カナダ、アラスカ方面、グリーンランドへの遠征を目指す。沖縄の伝統的小型木造帆船「帆掛サバニ」技術継承に取り組んでいる。