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フィジー遠征 ラウ諸島縦断~先人達の足跡をたどる旅~

今年で5回目となる旅ねしあの海外遠征がいよいよ始まった。
「旅ねしあ」とは沖縄で切磋琢磨してきた元同僚カヤックガイド3名によるチーム名であり、年に一度オフシーズンに集結しカヤック遠征を行っている。
コロナが終焉した一昨年からは2年かけてインドネシアの1500kmにおよぶ島々をカヤックで漕ぎ渡り、現地の人々との交流を深めてきた。
そんなカヤック旅に魅せられた私達が今回選んだ海は南太平洋に浮かぶ小さな島国フィジー共和国。
大小300以上の島と環礁からなる島嶼国家であり、その中でも南側のコロ海に点在するラウ諸島を旅することに決めた。
ちなみに観光客の多くは北西部のママヌザ諸島やヤサワ諸島のリゾート地を目指す。
私達が目指したラウ諸島はいまだ観光開発もされておらず、ありのままのフィジアンの生活が残る貴重な地域である。

ナンディ―国際空港からバスと船を乗り継ぎ20時間。
フィジー東部のタベウニ島から始まった旅はラウ諸島を時計回りに周遊することになった。
初めて肌で感じる貿易風。
どことなくいつも感じる風の重みとは少し違う。
先人達は伝統カヌーに乗りこの風を使って遥かタヒチやハワイまでを移動したそうだ。
数千年経った今こうしてカヤックを使って、先人達と同じ風を感じ旅している事に胸が熱くなる。
空と海が交わる水平線の先には一体どんな世界が広がるのだろう?
連日緊張感のある島渡りが続くのだが、不思議と心の中はとても穏やかでどこか懐かしさを感じた。
未開の地を求めて渡った彼らの気持ちに少し近づけたのかもしれない。

ラウ諸島は約200年前には隣国トンガに占領されていた土地であり、伝統や文化もトンガの影響を大きく受けている。
ラウ諸島の人々が話す固有の言語もフィジー本土とは違い、トンガに近い言語が使われる。
国籍上はフィジアンでありながらも、彼らの心の中にはラウの民族としての独自のアイデンティティを持っている。

近年中国からのインフラの援助やスターリンクの登場により、大海に浮かぶ小さな島々にも近代化の波が急激に押し寄せている。
今回訪れた島にはどこの家庭にもソーラーと蓄電器が備えられ、人々はスマホを使い、街と変わらない便利な暮らしがそこにはあった。
旅をする側の私達としては便利で均一化された島の生活に少し寂しさも覚えるのだが、生き方は現地で暮らす彼らが選択することである。
しかし近代化が進む暮らしの中でも先祖代々受け継いだ伝統や文化を大切に守り、実践している人が多くいることは、とても素晴らしく思えた。
目先の利益にとらわれずに、この先も独自の文化と伝統を絶やさず受け継いでもらいたいと、旅人の私は祈る。

村単位の結束と相互扶助の強さがこの国の特徴であり、フィジーが幸福度の高い国と言われる理由の一つのように感じる。
代表的なものでは「ケレケレ」という風習がこの国にはある。
これは「自分のものはみんなのもの、みんなのものは自分のもの」であり、富はみんなで分かち合いシェアするという考えが村単位で根付いている。
困っている人がいたら助ける。逆に困った時は助けてもらう。
当たり前のように思えるが、貨幣経済の世の中で実践することは容易ではない。
そしてそのような関係性を村人全員で共有して作っていける環境にはただならぬ努力が必要である。
あと10年もすればさらに島の生活は大きく変化していくことだろう。
この先も変わらないフィジアンらしい陽気で温かい暮らしが続くことを願う。

旅は残り1/3の地点で警察からカヤック旅を中止するように要請があり、撤退を決断する事にした。
領海内を航海するための届出が出ていないこと、そしてカヤックへの安全性に疑問があることが主な理由であった。
フィジー在住者の方々にも協力してもらい、なんとか旅を続ける方法がないか探したが、警察を納得させられるだけの材料はなく撤退を決断するに至った。
旅を撤退する悲しみよりも、同じ海洋民族であるフィジアンに海を渡る行為が危険と判断された事に深い悲しみを覚えた。
フィジーでは数千年前にカヌーで渡った先人達の功績は過去の栄光となり、今現在はその航海術を受け継ぐ者はもういない。
実際に1か月かけ15もの島々を訪れこの現状を目の当たりにしてきた。
便利な暮らしは島の人々を海から遠ざけてしまったのかもしれない。
もし手漕ぎで訪れた私達を見たフィジアンの中に刺激を受けた人が一人でもいたのなら、それだけでこの旅は十分価値のあるものとなる。
誇り高き海洋民族の末裔としてまた海を渡り先人達の足跡を辿るフィジアンが増える未來に期待したい。

パドリング中は毎日なぜこんな辛い思いをしながら漕いでいるのか?
なんのためにこんな辛いことをしているのか?
いつもそんなことばかりを自問自答している。
でもいくら考えてもその答えは見つからないし、見つけなくて良いと思っている。
最高の仲間達と未知なる海へ挑み、異国の地に生きる人々に会いに行く。
こんなに楽しく刺激的な人生はない。
旅する理由はこれだけで十分だ。
来年はどんな海と人々に出会えるのだろうか。
まだまだ私達の旅は始まったばかりだ。

旅ねしあ 南平 純
島々(=nesia)を人力で旅することで自然の素晴らしさ、
アウトドアの魅力を発信しようと2014年から活動開始。
南平 純
OUTISE 主宰
アウトドア未経験ながら海を旅する事を目指して脱サラ。
石垣島のカヤックショップの門を叩き、八重山諸島を漕ぎ回まわる。
生まれ育った伊勢志摩の魅力を伝えるためにUターンし、現在はOUTISEを主宰。
運天 陵
Sunwave Kayaks主宰
大学の卒論でカヤックを使ってフィリピン・四国・南西諸島を漕ぎ回り、夏休みには鹿児島から地元沖縄へとカヤックで帰省。
石垣島で修行を積み現在はSunwave Kayaksを主宰。
佐藤 瑛彦
パタゴニア神戸、Island Stream スタッフ
カナダ自転車旅から始まり、一年半の中南米放浪など根っからの旅好き。
ニュージーランドと石垣島でカヤックガイドとして経験を積み、現在は和歌山アイランドストリームのガイドとパタゴニア神戸で勤務。







